法華経に出てくる言葉の意味わかりやすく
【仏の方便についてわかりやすく】
■仏の方便(ほうべん)とは、
方便(ほうべん)の言語はウパーヤで「近づく」という意味
『到達の手段』の意味で、
さとりに導いて救済する手段
『善巧方便(ぜんぎょうほうべん)』といい、
ほとけの智慧へ導くために用いる巧みな手段
【法華経の功徳と回向、供養の用語について】
■功徳(くどく)の用語をわかりやすく
功徳(くどく)の原意は
「グナ」優れた性質
「プニヤ」福徳
「アヌシャンサ」利益の意味がある。
法華経での功徳は、
1、受持する
2、読誦する(読む)
3、暗誦する(暗記して声に出す)
4、説き広める
5、写経する
とよく出てくる。
そのように生きる人を「法華経の行者」「持経者」という。
日本では「南無妙法蓮華経」の題目にすべてが集約されると、題目三唱なども広まる。
■回向(えこう)の用語をわかりやすく
回向の原意は「パリナーマナー」
自分の善行の功徳を他の人に振り向けること。
お経の前半には「自己の苦の解決」の教えを優先する部派仏教(小乗)を批判するのがよくでてくるのですが、
『法華経は人々の救済の精神が根底にあるお経』
小乗も大乗も関係なくすべてを救済するのが目的とも表現されています。
■供養(くよう)の用語をわかりやすく
供養(くよう)の原語は「プージャー」で奉仕する、仕える意味。
法華経では、法華経の塔(経塚)をたて供養せよと繰り返しでてきます。
経塚(きょうづか)とは、仏舎利がないので、法華経の経典を代わりに埋めて、そこに塚を祀る
経塚
滋賀県大津市近津尾神社の経塚
撮影:ぼーさん
《参考》インドの世界遺産アジャンターでは、紀元前の上座部(小乗)チャイティヤ塔(仏舎利塔)から紀元後の大乗仏教のチャイティヤ塔の遺跡を見ることができます。
■十如是について
「十如是」(じゅうにょぜ)
相(そう)・すがた
性(せい)・性質
体(たい)・形
力(りき)・能力
作(さ)・作用
因(いん)・過去の由来
縁(えん)・おかれた状態
果(か)・現在の結果
報(ほう)・未来の在り方
本来究竟等(ほんらいきゅうきょうとう)・すべては究極にあいて等しいさま
※「方便品第二」にでてきますが、サンスクリット語訳では、「如来はあらゆる現象を知っている。その現象がなにか?どうのようなものか?いかなる本質をもつか?」と訳されていて、具体的な十の要素の用語はでてきまていません。 この十如是は鳩摩羅什訳で足された可能性があるといわれてます。
「十如是」は、中国天台宗開祖智顗によって教義が展開して、三つの真理が融合している意味と解説もされています。
■空諦(くうたい)・空の真理。すべては不変の実体をもたない意味
■仮諦(けたい)・仮の現れとしての真実。すべて空であっても生起する物事がある意味
■中諦(ちゅうたい)・中道の真理。現実は空諦と仮諦のどちらにも偏らずにある意味
原始仏典にでてくる、四つの真理「四諦」と内容が違いますね。見比べてみて下さい。
■法華経の縁起と空の用語についてわかりやすく
法華経の縁起は「因縁果」(いんねんか)の概念で、
ものごとの原因と、それとのかかわりの関係の縁と、その結果の果報で表現されています。
それは言いかえれば、
それぞれは単独で存在していない「空」である
と表現されています。
原始仏典にでてくる、「縁起」は、「四諦」のひとつ「集諦」です。
■声聞・縁覚・菩薩の違いをわかりやすく
「声聞」(しょうもん)は四諦で仏道を修める者(小乗仏教者)
「縁覚」(えんがく)は十二因縁で仏道を修める者。辟支仏(びゃくしぶつ)とも言う。(小乗仏教者の阿羅漢や婆羅門)
「菩薩」(ぼさつ)は六波羅蜜によって仏道を修める者(主に大乗仏教者)
とでてきます。
※ちなみに、サンスクリット語訳には声聞と、偉大な志をもつ求法者の二者で訳されています。
※時代背景に、分裂して別れた上座部仏教と大乗仏教との仏教思想の違いや、部派仏教僧団への批判が、法華経の前半にはたくさん書き込まれています。
・上座部仏教(原始仏典を保持する仏教僧団)は出家して戒律を守り、さとりを得る。阿羅漢をめざす保守的な仏教僧団。「ヒーナーヤーナ」(小さい乗り物、小乗)と表現される。
その中でも、上座部から分裂した、
説一切有部(せついっさいうぶ)のグループ、
・シューラーバカ「教えを聞くもの」で法華経での「声聞」とされる。
・プラティーエーカー・ブッダ「独りでさとった者」(独学・どくがく)、(辟支仏・びゃくしぶつ)とも呼び、法華経での「縁覚」とされるとの解説もあります。
・大乗仏教は、マハーヤーナー(大きい乗り物・大乗)と表現した。
■一仏乗の用語についてわかりやすく
【一仏乗】(いちぶつじょう)
声聞(四諦の教え)・縁覚(十二因縁の教え)・菩薩(六波羅蜜)のすべての教えを統合したさとりへの乗り物の教え
■法華経での3つの菩薩の意味をわかりやすく
《法華経での3つの菩薩の意味》
- 大乗の修行者の菩薩
- 三乗を統一した一仏乗の菩薩(法華一乗)で無上のさとりの「阿耨多羅三藐三菩提」を目指す菩薩
- 観音菩薩や普賢菩薩など救済者としての菩薩
「菩薩」の言語は「ボーディーサットヴァ」で、
さとりの「ボーディー」と衆生の「サットヴァ」でさとりを求める者
■一乗・二乗・三乗の用語の意味をわかりやすく
一乗(いちじょう)
声聞(四諦の教え)・縁覚(十二因縁の教え)・菩薩(六波羅蜜)のすべての教えを統合したさとりへの乗り物(一仏乗)の教え
二乗(にじょう)は声聞・縁覚の二乗の教え
三乗(さんじょう)は声聞・縁覚・菩薩の三乗の教え
「方便品第二より」
仏の方便をもって、一仏乗に導くためなのです。
人々が貪瞋痴に犯されているので、仏の方便で三乗を説くのです。
しかし、声聞、縁覚に満足して阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)の「無上の真実の完全なさとり」を求めないならば、
その人は増上慢ゆえに真理の道から外れているのです。
※上座部僧団でも、今までの大乗仏教僧団でもない、すべてを一つにまとめる教義の新しい大乗僧団が法華経の思想を作り出したともいわれる。
【仏の方便・方便の力】を載せておきます。
方便・・・原語「ウパーヤ」は近づくの意味で、
到達の手段の意味さとりに導いて救済する手段。
「善巧方便」(ぜんぎょうほうべん)
仏の智慧へ導くために用いる巧妙な手段
■六波羅蜜(ろくはらみつ)をわかりやすく
波羅蜜(はらみつ)で、「完全な智慧」の意味や、「彼岸に渡る」意味(さとりを得る)が含まれたりします。
六波羅蜜で、六つの彼岸に渡る(さとる)方法
1、布施波羅蜜(ふせはらみつ)、布施をすること。
2、持戒波羅蜜(じかいはらみつ)、戒律を保つ。
3、忍辱波羅蜜(にんにくはらみつ)、耐えて他人の迷惑を許す。
4、精進波羅蜜(しょうじんはらみつ)、努力して行う。
5、禅定波羅蜜(ぜんじょうはらみつ)、集中して行う。
6、智慧波羅蜜(ちえはらみつ)、上記5つを修養してえられる智慧。
■十波羅蜜(じゅうはらみつ)
六波羅蜜に4つ足されて十波羅蜜。
7.方便波羅蜜(ほうべんはらみつ) 智慧を導き出す手段を得ること
8.願波羅蜜(がんはらみつ)智慧を求めようとする願いをもつこと
9.力波羅蜜(りきはらみつ) 善を行い真偽を判別する力を養うこと
10.智波羅蜜(ちはらみつ)究極的な,働きをもった智を得ること
般若波羅蜜多心経(はんにゃはらみたしんぎょう)
タイトル入れて276文字の有名なお経ですが、
般若は智慧の意味で、智慧で彼岸に渡る(さとる)方法を説いているお経とされています。
⇒ブッダの説いた、四諦・十二縁起などの「法」の教義に囚われることを否定して、「空」を洞察して実体する智慧によってこそ「さとり」に至ると説かれています。
彼岸(あの世)に渡らなくても、此岸(この世)にいながら彼岸の智慧をつけるなどの解釈もあります。
■四安楽行(しあんらくぎょう)
【四安楽行・しあんらくぎょう】
ブッダ滅後の時代に法華経を説き広めるために、
1、行動と交際の範囲を厳守
2、他人を非難しない、他者と議論しない
3、えこひいきしない
4、他人に信仰させ、さとりを達成させるようにする
さらに、
「四種の行法」とも呼ばれ、
1、身、2、口、3、意、について過誤を離れて、
4、衆生を導くために誓願を立てる。こと
安楽行とは、身に危険がなく、こころに憂いや悩みがなくして行える意味。
■四無礙智(しむげち)・四無礙弁(しむげべん)
仏や聖者が法を説き得る智的能力
・法無礙智(ほうむげち)、表す数に精通している。
・義無礙智(ぎむげち)、文字や文章の意味内容の義理に精通している。
・詞無礙智(しむげち)、言語に精通している。
・楽説無礙智(らくせつむげち)、以上の三つをもって、衆生のために説法するのが自在なこと。
■無畏施(むいせ)・四無所畏(しむしょい)
無畏施(むいせ)は、
恐怖を癒して平安をもたらすことの意味
四無所畏(しむしょい)は、
仏や菩薩が恐れることなくゆるぎない力をもつ意味
①等正覚無畏(とうしょうがくむい)・・・さとりにおいてゆるぎない
②漏永尽無畏(ろえいじんむい)・・・煩悩を滅ぼすことにおいてゆるぎない
③説障法無畏(せっしょうほうむい)・・・説法で障りをのぞく
④説出道無畏(せつしゅどうむい)・・・さとりに導く説法においてゆるぎない
■陀羅尼(だらに)について
陀羅尼(だらに)はまず、
「分別功徳品第十七」に「門持陀羅尼」(もんじだらに)と「旋陀羅尼」(せんだらに)という言葉で出てきます。
そして、
「陀羅尼品第二十六」「普賢菩薩品第二十八」では呪文としてガッツリでてきます。
陀羅尼(だらに)の意味は、
漢訳では、
「教えを保って失忘しない」
サンスクリット語では、ダラーニーで「念力」と訳され、
「煩悩を分離させる精神力」
と解説されています。
また、
陀羅尼(だらに)は「ダラーニー」で、
「保持する」という意味。
語句の短いのを、真言(しんごん)「マントラ」ともいう。
陀羅尼呪(だらにしゅ)の呪は秘密の意味で、
陀羅尼そのものが呪文で「秘密の言葉」とも解説されています。
■聞法結縁(もんぽうけちえん)の意味をわかりやすく
「聞法結縁」(もんぽうけちえん)
仏法をきくことが功徳で、仏の救いにあずかることの意味。
「随喜功徳品第十八」(ずいきくどくほん)にでてきます。
法華経によくでてくる数の表現
原始仏典でもそうですが、
「法華経」にも独特の時間概念の世界観が表現されています。
読み方 | 長さの説明 |
劫(ごう) |
時間の単位 天人が百年に一度、上下四方四十里の巨岩を天衣で撫でて、その巨岩がすり減って消えるまでの時間が「一劫」(いちごう) |
中劫(ちゅうごう) | 一劫の80分の1、 |
小劫(しょうごう) | 中も小も同じように表現される |
須臾(しゅゆ) | 一日の30分の1の時間 48分 |
刹那(せつな) | 極めて短い一瞬の時 |
由旬(ゆじゅん) |
牛にくびきをつけて一日に牛が進む距離。 1由旬は約14.4kmもしくは約7.3kmとされる |
那由多(なゆた) | 1000億 |
阿僧祇(あそうぎ) |
数えることができないほど無数 10の56乗 (電卓では1E+56と出てきました。) |
恒河沙(ごうがしゃ) | ガンジス河の砂の数ほどに無数 |
微塵数(みじんじゅ) | 全世界を砕いて粉にした塵(ちり)の数 |
塵点劫(じんてんこう) | 微塵数の塵の粉を墨として点を書いて、その墨がなくなるほどの途方の無い表現の数 |
おすすめの法華経の本
①「図解」法華経大全 著者:大角修先生
解説もとても充実していて、理解しやすくとても読みやすいです。
まずこの本を読んでから、岩波文庫の「法華経」を読み比べてみました。
最初の一冊として、超おすすめです。
②法華経 岩波文庫ワイド版 坂本幸男先生・岩本裕先生
この本を読む注意に、まず「右側のページ」の上は漢文、その下に漢訳です。漢訳は表現が文語体なので難しく理解しづらいです、、、。
そして、「左側のページ」はサンスクリット語からの訳です。
原本が違うので別によんだ方がいいです。
そして、漢訳とサンスクリット語を読み比べると、
違いが発見できて、本来の意味の理解にもつながって、とてもいいと感じました。
言葉に関しても、サンスクリット語の「サルヴァ―ルタ・ナーマン」が漢訳では「常精進菩薩」なのだなと単語と漢字を見比べることもできますし、陀羅尼(だらに)も全然違うのだと気づきました。
読経するときや、真言を唱えるときにも役立つかと思いました。
注釈も分量が多いので、細かいところまでとても把握はできてませんが、
解説も充実しているので、全体を細かく知りたいときや、辞書みたいに使える内容として、お手元にあったほうがいいです!
法華経はなにを説くのか 著者:久保継成先生
大乗経典を読む 著者:定方晟先生