「毒矢のたとえ」は原始仏典 中部教典 第63経「箭喩経」(せんゆきょう)にでてきます。
このお経は修行僧がブッダに「世界に終わりがあるのか?」「世界は無限か?」などの疑問をブッダに質問して、ブッダが「毒矢のたとえ」で説法するお経です。
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「毒矢のたとえ」がでてくるお経 中部教典 第63経 箭喩経(せんゆきょう)
《マールンキャープッタ出家者は疑問が起こりブッダに聞きに行きます》
マールンキャープッタ出家者は家をでて、ひとりで修行の瞑想しているときに次のような疑問が起こりました。
「世界に終わりがあるのか?」
「世界は無限か?」
「生命と身体は同一か?」
「ブッダは死後存在するのか?」などの疑問です。
そして、その疑問をブッダ聞きに行こう。と考えます。
《ブッダの回答次第で、仏教僧団に残るか、やめるかを判断しようとします。》
もしブッダが、その疑問の答えを教えてくれたら、わたしはブッダのところで修業を続けよう。
もし、ブッダがその疑問に答えてくれないならば、わたしは今のこの修行も捨てて、元の家のある生活に戻ろう。と考えます。
そして、マールンキャープッタ出家者はブッダのところに行き質問をします。
「世界に終わりがあるのか?」「世界は無限か?」
「生命と身体は同一か?」「ブッダは死後存在するのか?」
「知っているなら知っていると答えてください。
知らないなら知らないと答えてください。」
「ブッダが答えてくれたなら、わたしは修業を続けます。
「もしブッダが答えてくれなければ、わたしは元の生活にもどります。」
ブッダは逆にマールンキャープッタ出家者にこう問います。
「マールンキャープッタよ、わたしはあなたに、
「世界に終わりがあるとか、終わりがないとか」、
「世界は無限であるとか、限りがあるとか」
「生命と身体は同一である」、
「ブッダは死後存在する」などと
教え伝えたことがあるか?」
マールンキャープッタ出家者は答えます。
「ありません」
ブッダはさらにマールンキャープッタ出家者に問います。
「あなたは今まで、
「世界に終わりがあるのか?」「世界は無限か?」
「生命と身体は同一か?」「ブッダは死後存在するのか?」
をこたえてくれるなら修行をしましょうと言ったことがあるのか?
マールンキャープッタ出家者は答えます。
「ありません」
《ブッダはマールンキャープッタ出家者に戒める言葉を伝えます。》
「それなのになぜ、そんなことを聞くのか?
真理を教えている人が、そのようなことを教えていないのに、
教えていない回答を聞くまでは、修業をしません。
そのようなことをいう人がいれば、
その人は永遠に教えを聞かないまま死んでいってしまうであろう。」
「毒矢のたとえ」ブッダの説法
《毒矢のたとえ》
「ある人が毒をぬった矢で射られたとしよう、
その人が治療をしようとする人に、
だれがこの毒矢をわたしに射ったのですか?バラモンの人ですか?王族の人ですか?一般の人ですか?それを知るまでは、わたしはこの矢は抜かない。
また、わたしを射った人の肌はどんな色ですか?黒く焼けた人ですか?色の白い人ですか?それを知るまでは、わたしはこの矢は抜かない。
また、わたしを射った人はどこに住んでいますか?この町ですか?それとも隣の町ですか?それを知るまでは、わたしはこの矢は抜かない。
また、わたしを射った矢の柄はワシの羽ですか?タカの羽ですか、それともクジャクの羽ですか?それを知るまでは、わたしはこの矢は抜かない。
と言ったら、矢を射られた者は、その答えを知らないうちに死んでしまうであろう。
それと同じように、真理を教えている人が、そのようなことを教えていないのに、
「教えていない回答を聞くまでは、修業をしません。
という人がいれば、
その人は永遠に教えを聞かないまま死んでいってしまうであろう。」
さらにブッダはマールンキャープッタ出家者に伝えます。
《ブッダが教えないことと、その理由を伝えます。》
わたしは
「世界に終わりがあるのか?」「世界は無限か?」
「生命と身体は同一か?」「ブッダは死後存在するのか?」など教えません。
わたしは生きているものには、老いがあり、死があり、悩みや苦しみがあり、その悩みや苦しみの解決を教えているのです。
それゆえ、わたしが教えなかったことは、教えていないこととして認識しなさい。
わたしが教えていることだけを理解するようにしなさい。
ではなぜ、わたしは
「世界に終わりがあるのか?」「世界は無限か?」
「生命と身体は同一か?」「ブッダは死後存在するのか?」など教えないのか。
このようなことは、目的にかなわず、清らかな行いにならず、煩悩の消滅、こころの安らぎ、すぐれた智慧、正しいさとり、涅槃のために役に立たないから、わたしはそのようなことは教えません。
《四つの真理、四諦を説法します。》
マールンキャープッタよ
「これは苦である」
「これは苦がでてくる原因である」
「これは苦の消滅である」
「これは苦の消滅に導く道の実践である」
この苦の解決の四つの真理である「四諦」をわたしは教えます。
目的にかない、清らかな行いになり、煩悩の消滅、こころの安らぎ、すぐれた智慧、正しいさとり、涅槃のために役に立つから、わたしは四諦を教えるのです。
《マールンキャープッタ出家者が歓喜します。》
ブッダの教えをしっかり理解したマールンキャープッタ出家者は喜んで修行を続けました。
このお経の毒矢のたえと話きいたから、無駄なこと考えるのやめるね♪
このお経の最後は「四諦」(したい)の教えで締めくくられているね!
図解も参考にしてくださいね!
マンガ 中部教典 第63経「箭喩経」(せんゆきょう)
毒矢のたとえの話