原始仏典にでてくる神通力(じんずうりき・じんつうりき)を図解でわかりやすく簡単に説明します。ブッダが使った神通力も、経典にでてくる神通力も紹介します。神通力は瞑想を修習することによって得られる、五神通、六神通など、人の能力を超えた自在な能力です。お経には色界の瞑想、四禅(しぜん)の第四禅(だいよんぜん)を修習することによって得られるとでてきます。

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神通力とは わかりやすく簡単に
神通力(じんずうりき・じんつうりき)とは、
わかりやすく簡単に伝えると、
瞑想を修習することによって得られる、人の能力を超えた自在な能力です。
経典には、天界(てんかい)の世界に住む、梵天(ぼんてん)や帝釈天(たいしゃくてん)、欲界(よくかい)の地獄に住む、パーピマンやドーシンなど悪魔もでてきて、神通力を使う場面もよくでてきます。
このことから、神通力には大きな二つに、
神通力には、生まれながら持つ神通力「生得」(しょうとく)と、瞑想で得られる神通力「修得」(しゅうとく)の二つがある
1.「生得」(しょうとく)の神通力
天の神様や鬼畜たちが生まれつきもっている神通力
2.「修得」(しゅうとく)の神通力
瞑想・禅定を修めて得ることができる神通力
の二つの神通力があるとされています。
ここからは、瞑想で得られる神通力を詳しく見ていきましょう。
瞑想で得られる神通力
色界の瞑想「四禅」(しぜん)の第四禅(だいよんぜん)の境地を得たあとに修得される能力です。
四禅(しぜん)はサマタ瞑想の一種で、座禅でいう止観(しかん)の「止める・とどめる」精神統一の瞑想です。仏教の世界観、三界(さんがい)欲界、色界、無色界の「色界」(しきかい)の瞑想になります。この瞑想に入るまえに、覚りの障害となる五蓋(ごがい)を取り除く必要があります。

繰り返しになりますが、お経に出てくる瞑想で得られる神通力(じんつうりき)は色界の瞑想、四禅(しぜん)の第四禅を修習することによって得られる、五神通や六神通(ろくじんつう)など、人の能力を超えた自在な境地を表現したものですが、
ブッダが亡くなった後に分類されて整理された神通力と解説されています。
つぎに、
ブッダが利用した、本来の目的での神通力を説明します。
このページの下部分に、経典にでている本来の神通力も紹介します。
神通力の本来の意味
神通力の本来の意味は示導(しどう)すること
生ける者を教化(きょうか)するために、人を信伏させ正法(せいほう)に導きいれる意味です。
示導(しどう)の意味は、
・示導(しどう)とは、
- 人々を真理へ導く意味
- さまざまな煩悩を取り除く
さらに、この示導には3つあります。
・3つの示導
1.「神変示導・しんぺんしどう」
神通力でさまざまな事象を示す
2.「説諭の示導・せつゆのしどう」
他人の心の動きをしり、説論すること
3.「訓戒の示導・くんかいのしどう」
仏や弟子がいつも行っている説法
上記の本来の意味での神通力を踏まえたうえで、
五神通・六神通を見ていきましょう。
項目が多いので、図解と合わせて確認してください。
五神通、六神通の神通力

1、神変・2、天耳智・3、他心智・4、宿住随念智・5、死生智で、
五神通
6、漏尽智を含めて
六神通です。
1、神変(しんぺん)・神足(じんそく)
神変(しんぺん)は
・神足通(じんそくつう)
・神境智証通(じんきょうちしょうつう)
・神境通(じんきょうつう)
・身如意通(しんにょいつう)
・如意通(にょいつう)
・身通(しんつう)とも呼ばれます。
神変は、さまざまな能力で10種類(1-①と枠の下1-②~1-⑩)あります。
1-①、決意神変(けついしんぺん)は、
さらに「枠内の10種類①-1~①-10に細分類↓」
1-①決意神変
①-1、一身多心神変(いっしんたしんしんぺん)
「ひとつから多くになる能力」
①-2、多身一身神変(たしんいっしんしんぺん)
「おおくからひとつになる能力」
①-3、顕現神変(けんげんしんぺん)
「現れたりする能力」
①-4、隠匿神変(いんとくしんぺん)
「隠れる能力」
①-5、不障礙神変(ふしょうげしんぺん)
「塀に垣根、山も空中を行って越える能力」
①-6、地中出没神変(ちちゅうしゅつぼつしんぺん)
「大地において水中に沈む能力」
①-7、水上不没神変(すいじょうふぼつしんぺん)
「水に沈まない能力」
①-8、飛行神変(ひこうしんぺん)
「鳥のように空中を行く能力」
①-9、日月把触神変(にちげつわしょくしんぺん)
「太陽や月を手でさわれる能力」
①-10、身自在神変(しんじざいしんぺん)
「梵天が住む世界にも肉体をもったままいける能力」
神変・神足の二つ目以降が、
1-②、変化神変(へんげしんぺん)
1-③、意所成神変(いしょせいしんぺん)
1-④、智遍満神変(ちへんまんしんぺん)
1-⑤、定遍満神変(じょうへんまんしんぺん)
1-⑥、聖神変(しょうしんぺん)
1-⑦、業異熟生神変(ごういじゅくせいしんぺん)
1-⑧、具福神変(ぐふくしんぺん)
1-⑨、呪術所成神変(じゅじゅつしょせいしんぺん)
1-⑩、彼彼処正加行神変(あしこせいけぎょうしんぺん)
*神変のふりがなは不明瞭です。参考程度にしてください。
次に、
天耳智です。
2、天耳智(てんにち)・天耳通(てんにつう)
天耳通(てんにつう)は、
・天耳智(てんにち)
・天耳智証通(てんにちしょうつう)
・天耳智通(てんにちつう)とも呼ばれます。
「天耳の智」天と人間両方の声を聞く能力で、
世間のすべての声をことごとく聞きとるはたらき。
*この耳は欲界を越えた、色界での浄らかな物質の耳です。色界だから「天」が付いています。
*原始仏典では、太鼓の音、ほら貝の音のたとえで表現されて出てきます。
次に、
他心智です。
3、他心智(たしんち)・他心通(たしんつう)
他心智(たしんち)は、
・他心通(たしんつう)
・他心智証通(たしんちしょうつう)
・知他心通(ちたしんつう)とも呼ばれます。
「他心を知る智」他人の貪りある心など洞察する能力で、
他人の心中に思う善悪のことをことごとく知るはたらき。
*鏡とほくろのたとえで表現されてお経にでてきます。
次に、
宿住随念智です。
4、宿住随念智(しゅくじゅうずいねんち)・宿命通(しゅくみょうつう)
宿住随念智(しゅくじゅうずいねんち)は、
・宿命通(しゅくみょうつう)
・宿住随念智証智(しゅくずうずいねんちしょうち)
・宿住智通(しゅくじゅうちつう)
・識宿命通(しきしゅくみょうつう)とも呼ばれます。
「過去の生存を想起」前世の生涯、たくさん前の生涯、欲界・色界・無色界の三界を洞察する能力で、自他の過去の世の生存の状態をことごとく知るはたらき。
*村から村のたとえで表現されてお経にでてきます。
次に、
死生智です。
5、死生智(しせいち)・天眼智(てんがんち)
死生智(しせいち)は、
・天眼智(てんがんち)
・天眼通(てんがんつう)
・天眼智証通(てんがんちしょうつう)
・天眼智通(てんがんちつう)とも呼ばれます。
「天眼の智」生ける者の死と再生を洞察する能力で、
生きものたちが行為に応じて死後、地獄か天界に再生するのを見通すはたらき。
*この眼は欲界を越えた、色界での浄らかな物質の眼です。色界だから「天」が付いています。
*十字路の家のたとえで表現されてお経にでてきます。
この五つで、五神通です。
そして、次の
漏尽智を入れて六神通です。
6、漏尽智(ろじんち)・漏尽通(ろじんつう)
漏尽智(ろじんち)は、
・漏尽通(ろじんつう)
・漏尽智証通(ろじんちしょうつう)とも呼ばれます。
「煩悩を滅する智」苦集滅道の四諦(したい)を洞察する能力で、
煩悩をすべて滅して二度と再生しないことをさとる能力です。
*澄んだ湖のたとえで表現されてお経にでてきます。
ついでに、
経典によくでてくる三明(さんみょう)の意味も見てみましょう。
神通力の三明(さんみょう)
4、宿住随念智(しゅくじゅうずいねんち)・宿命通(しゅくみょうつう)
「過去の生存を想起」前世の生涯、たくさん前の生涯、欲界・色界・無色界の三界を洞察する能力です。(宿命通・しゅくみょうつう、宿住智通・しゅくじゅうちつう)とも呼ばれる。
5、死生智・しせいち(天眼智・てんがんち)
「天眼の智」生ける者の死と再生を洞察する能力です。
6、漏尽智・ろじんち(漏尽通・ろじんつう)
「煩悩を滅する智」苦集滅道の四諦(したい)を洞察する能力です。
三明(さんみょう)は六神通の4、5,6の三つ
この三つで、「三つの明智」の三明(さんみょう)と呼び、解脱の境地を「三明を得た」と表現されるときもあります。
もともと三明はバラモン教の聖典の3つのヴェーダ「リグ・ヴェーダ、サーマ・ヴェーダ、ヤジュール・ヴェーダ」に精通するバラモンの名称だったのが、仏教にも取り入れられたと解説があります。
つぎに、
経典にでてくるブッダが使った神通力を紹介します。
ブッダが使った神通力 お経に出てくる神通力
・長部経典 3巻 第24経 「パーティカ経」
このお経は「神通と世界の起源」と題されています。
お経の初めでは、ブッダが神通力を示さないから、世界の起源を解き明かしてくれないからとブッダのもとを去り還俗(げんぞく)するスナッカッタの話がでてきます。
お経の中ほどに、ブッダはスナッカッタに犬のようにふるまう裸行者(らぎょうしゃ)のコーラッカッティヤが七日後に亡くなることを神通力で示したにもかかわらず還俗していくことも書かれています。
お経のつづきに、ブッダの二倍の神通力を持つと吹聴するパーティカの息子がブッダに神通力で挑んで敗北することもでてきます。
このお経には、いろんなブッダの神通力が示されていますが、
パーティカの息子の挑戦に集まった人々に対して、
ブッダは神通力ではなく、
ブッダは法話によって人々を教え、論し、励まし、喜ばせた、そして、煩悩の束縛から解き放しました。
と、このページの前半部分で解説した、
「神通力の本来の意味の示導している」ことが経典にきちんとでてきます。
このお経のブッダの教えの締めくくりは、
わたしは、神通力以上のことを知っているので、神通力など言うに及よばない、さらに優れたことをしっているのです!カッ!
と言っています。
異教の見解、異教の信仰、異教の目的、外れた努力、外れた伝承で、
浄解脱(じょうげだつ・八解脱)に達することは困難です。
ブッダの教えをよく守りなさい。
と締めくくられます。
この最後の部分「異教の見解」は、
長部経典 第1経「梵網経」の62の間違った見解と同じことを説法しています。
神通力を解き明かそうが、解き明かすまいが、わたしによって説かれた真理は「実行する者を完全な『苦』の消滅に導くのです!」カッ!
・中部経典 第36経 「マハーサッチャカ経」
こちらのお経には、
三明と神通力がでてきます。
ほぐし読みでどうぞ見てください。


神通力の「因」(よりどころ)となる霊力、四神足(しじんそく)
神通力は瞑想で得られる能力なのですが、
その瞑想をするときに、役に立つ四つの力、
「四つの自在力を得る霊力」が
四神足(しじんそく)になります。
詳しくは、こちらをどうぞ!

