「陀羅尼品第二十六」(だらにほん)
前回、「観世音菩薩普門品第二十五」(かんぜおんぼさつふもんほん)では、ブッダは観音さんの慈悲を説きました。観音経の訳もあります!

「陀羅尼品第二十六」(だらにほん)

《薬王菩薩がブッダに質問します。》
薬王菩薩がブッダに質問します。
男であれ、女であれ、法華経を受持し読誦し、書写するなら、どれほどの幸いを得るのでしょうか?
ブッダは答えます。
多くの仏を供養するより、法華経を四句偈でも受持し、読誦し、書写するほうがはるかに幸いが大きいのです。
薬王菩薩は言います。
法華経を説き広めるものたちに、陀羅尼(だらに)の祈祷文(きとうもん)を与えて守護いたします。
《漢訳ひらがなよみの陀羅尼》
あに・まに・まね・ままね・しれ・しゃりて・しゃみ・しゃびたい・せんて・もくて・もくたび・しゃび・あいしゃび・そうび・しゃび・しゃえ・あしゃえ・あぎに・せんて・しゃび・だらに・あろきゃばさい・はしゃびしゃに・ねびて・あべんたらねびて・あたんだはれしゅだい・うくれ・むくれ・あられ・はられ・しゅきしゃ・あさんまさんび・ぼだびきりじって・だるまはりして・そうぎゃねくしゃね・ばしゃばしゃしゅだい・まんたら・まんたらしゃやた・うろた・うろたきょうしゃりゃ・あしゃら・あしゃやたや・あばろ・あまにゃ・なたや
下は、陀羅尼の音訳と訳語です。詳しい意味も読み方もわからないので参考程度にしてください。
《陀羅尼の音訳と訳語 *参考程度》
あに(奇異)・まに(所思)・まね(意念)・ままね(無意)・しれ(永久)・しゃりて(所行奉修)・しゃみ(寂然)・しゃびたい(澹泊)・せんて(志黙)・もくて(解脱)・もくたび(済度)・しゃび(平等)・あいしゃび(無邪)・そうび(安和)・しゃび(普平)・しゃえ(滅尽)・あしゃえ(無尽)・あぎに(脱莫)・せんて(玄黙)・しゃび(澹然)・だらに(総持)・あろきゃばさいはしゃびしゃに(観察)・ねびて(光耀)・あべんたらねびて(怗於内依倚恃所有)・あたんだはれしゅだい(究竟清浄)・うくれ(坑坎有無)・むくれ(高下亦無)・あられ(廻旋有無)・はられ(処周旋所)・しゅきしゃ(其目清浄)・あさんまさんび(所等等無)・ぼだびきりじって(覚巳越度)・だるまがりして(於法而察)・そうぎゃねくしゃね(合衆)・ばしゃばしゃしゅだい(無音)・まんたら(所説鮮明)・まんたらしゃやた(止足而懐)・うろた(節減尽除)・うろたきょうしゃらゃ(暢音響宜)・あしゃら(了衆声暁)・あしゃやたや(文字而了)・あばろ(窮尽有無)・あまにゃ(力勢有永無)・なたや(思念所無)
《サンスクリット語の陀羅尼》
アヌェー、マヌェー、マネー、ママネー、チッテー、チャリテー、サメー、サミター、ヴィシャーンテー、ムクテー、ムクタタメー、サメー、アヴィシャメー、サマサメー、ジャエー、クシャエー、アクシャエー、アクシネー、シャーンテー、サミテー、ダラーニ、アーローカ=バーシェー、プラティアヴェークシャニ、ニディル、アビアンタラ=ニヴィシュテー、アビアンタラーパーリシュッディ、ムトクレー、ムトクレー、アラデー、パラデー、ス=カーンクシ、アサマ=サメー、ブッダ=ヴィローキテー、ダルマ=パリークシテー、サンガ=ニルゴーシャニ、ニルゴーニ、バヤーバヤ=ヴィショーダニ、マントレー、マントラークシャヤテー、ルテー、ルタ=カウシャルエー、アクシャエー、アクシャヤ=ヴァナターエー、ヴァックレー、ヴァローダ、アマヌヤナターエー、スヴァーハー
■思念が尽くるところに、寂然たる安和あり。解脱の玄黙のうちに凝然と観ずれば究竟清浄なる眼に法を察す。
陀羅尼の概略:大角修先生
陀羅尼(だらに)は「ダラーニー」で、
「保持する」という意味。
語句の短いのを、真言(しんごん)「マントラ」ともいう。
陀羅尼呪(だらにしゅ)の呪は秘密の意味で、
陀羅尼そのものが呪文で「秘密の言葉」と解説されています。
この陀羅尼は神威のこもる祈祷文の神呪(しんじゅ)で、
たくさんの諸仏が説かれたものです。
もしこれを受持する求法者を誹謗するものがあれば、
その誹謗する者が諸仏の徳を毀損(きそん)する者なのです。
ブッダは多くの衆生に多くの幸をあらしめようと薬王菩薩を称賛します。
次に、
布施の勇者の勇施菩薩(ゆうぜぼさつ)がブッダに伝えます。
「わたしも法華経を受持するものたちに、
鬼の夜叉(やしゃ)や、
人を惑わし人を食べる悪魔の羅刹(らせつ)、
熱病をもたらす病魔プータナの富単那(ふたんな)、
死体を操る悪魔キトゥヤの吉蔗(きっしゃ)、
残忍な悪魔クンバーンダの鳩槃荼(くはんだ)、
餓鬼(がき)などの
悪霊がつけいることはできない陀羅尼(だらに)の祈祷文(きとうもん)を与えて守護いたします。」
《漢訳ひらがなよみの陀羅尼》
ざれ・まかざれ・うつき・もっき・あれ・あらはて・ねれて・ねれたはて・いちに・いちに・しちに・ねれちに・ねりちはち
《陀羅尼の音訳と訳語 *参考程度》
ざれ(晃耀)・まかざれ(大明)・うつき(炎光)・もっき(暉演)・あれ(順来)・あらはて(富章)・ねれて(悦喜)・ねれたはて(欣然)・いちに(住止)・いちに(立制)・しちに(永住)・ねれちに(合無)・ねりちはち(集無)
《サンスクリット語の陀羅尼》
ジュヴァレー、マハー=ジュバレー、ウッケー、トゥッケー、ムッケー、アデー、アダーヴァティ、ヌリトゥイェー、ヌリトゥヤーヴァティ、イッティニ、ヴィッティニ、チッティニ、ヌリトゥヤニ、ヌリトゥヤーヴァティ、スヴァーハー
■光輝なる富の証の富章(ふしょう)に喜びの欣然として住止せよ。
陀羅尼の概略:大角修先生
この陀羅尼も神威のこもる祈祷文の神呪(しんじゅ)で、
たくさんの諸仏が説かれ随喜してきたものです。
次に、
北方守護の毘沙門天(びしゃもんてん)も、
衆生を哀れみ法華経を守護するものに陀羅尼を示し、また守護します。
とブッダに宣言します。
《漢訳ひらがなよみの陀羅尼》
あり・なり・となり・あなろ・なび・くなび
《陀羅尼の音訳と訳語 *参考程度》
あり(富有)・なり(調戯)・となり(無戯)・あなろ(無量)・なび(無富)・くなび(何富)
《サンスクリット語の陀羅尼》
アッテー、タッテー、ナッテー、ヴァナッテー、アナデー、ナーディ、クナディ、スヴァーハー
■金持ちの富有(ふゆう)なるは、あざける調戯(ちょうぎ)にして無戯(むぎ)なり。無量なれ。
陀羅尼の概略:大角修先生
この毘沙門天の陀羅尼の大角先生の解説に、宮沢賢治のエピソードがでてきます。とてもおもしろいですよ!下に本の紹介のせておきます。
次に、
東方守護の持国天王(じこくてんのう)がたくさんの音楽の精霊の乾闥婆衆(けんだつばしゅ)たちと共にブッダに宣言します。
「われもまた、持経者を守護するために陀羅尼を示します。」
《漢訳ひらがなよみの陀羅尼》
あきゃね・きゃね・くり・けんだり・せんだり・まとうぎ・じょうぐり・ぶろしゃに・あっち
《陀羅尼の音訳と訳語 *参考程度 岩波の解説にも?がついていました・・・。》
あきゃね(無数)・きゃね(有数)・くり(曜黒?)・けんだり(持香)・せんだり(曜黒?)・まとうぎ(きょう祝)・じょうぐり(大体)・ぶろしゃに(順述器于)・あっち(有至暴言)
《サンスクリット語の陀羅尼》
アガネー、ガネー、ガウリ、ガンダーリ、チャンダーリ、マータンギー、プッカシ、サンクレー、ヴルーサリー、シシ、スヴァーハー
■曜黒(ようこく)に持香し凶祝(きょうしゅく)の大本に至る。
陀羅尼の概略:大角修先生
次に、
生きものの精気を奪う妖怪の、藍婆(らんば)、毘藍婆(びらんば)、曲歯(こくし)、華歯(けし)、黒歯(こくし)、多髪(たほつ)、無厭足(むえんそく)、持瓔珞(じようらく)、臬諦(こうたい)、奪一切衆生精気の十羅刹女(じゅうらせつにょ)がいて、
鬼子母神(きしもじん)とその子ら眷属(けんぞく)と共ブッダに宣言します。
「わたくしたちもまた、持経者を守護するためと、憂いと患いを除きたいと思います。もし法師の弱みをうかがう者があっても、つけこまれることのないようにします。」とブッダに陀羅尼を示します。
《漢訳ひらがなよみの陀羅尼》
いでび、いでびん、いでび、あでび、いでび、でび、でび、でび、でび、でび、ろけ、ろけ、ろけ、ろけ、たけ、たけ、たけ、とけ、とけ
《陀羅尼の音訳と訳語 *参考程度》
いでび(是於)、いでびん(欺於)、いでび(爾乎)、あでび(民於)、いでび(甚極)、でび(無我)、でび(無吾)、でび(無身)、でび(無所)、でび(俱同)、ろけ(己興)、ろけ(己生)、ろけ(己成)、ろけ(而住)、たけ(而立)、たけ(亦住)、たけ(嗟嘆)、とけ(亦非)、とけ(害加得消頭大疾無)
《サンスクリット語の陀羅尼》
イティ=メー、イティ=メー、イティ=メー、イティ=メー、イティ=メー。
ニメー、ニメー、ニメー、ニメー、ニメー。
ルヘー、ルヘー、ルヘー、ルヘー、ルヘー。
ストゥヘー、ストゥヘー、ストゥヘー、ストゥヘー、ストゥヘー、スヴァーハー。
■ここに無我、無身なり。大疾も害を加うるを得ず。
陀羅尼の概略:大角修先生
「わたしも法華経を受持するものたちに、鬼の夜叉(やしゃ)や、人を惑わし人を食べる悪魔の羅刹(らせつ)、熱病をもたらす病魔プータナの富単那(ふたんな)、死体を操る悪魔キトゥヤの吉蔗(きっしゃ)、死体を操る青鬼のヴェーターダの毘陀羅(びだら)、赤鬼の犍駄(けんだ)、食人鬼ウマラーカの烏摩勒羅(うまろぎゃ)、妖怪アパスマーラの阿跋摩羅(あばつまら)たちが、
法師を悩ますことがないように偈でもって伝えました。
ブッダは法華経を受持する者の守護を讃えました。
そして、ブッダが陀羅尼品を説いたとき、
六万八千人が無生法忍を得たのです。
「無生法忍」(むしょうほうにん)
生起する物事の空を知る智慧、生死を超えて永遠の真理と合一する境地(*参照「分別功徳品第十七」)
《陀羅尼品第二十六 おわり》つづく
それにしても、漢訳の陀羅尼とサンスクリット語の陀羅尼は似てるようで似てないね。サンスクリット語の陀羅尼は最後「スヴァーハー」で終わっているね!続きも見てみよう!
スヴァーハー は、漢訳の薩婆訶(ソワカ)
バラモン教の儀式で天の神々に捧げられた供物の意味が、神格化され祭火の神アグニの妻の女神とも考えられているみたいです。バラモンの儀式の際に、供物を祭火に投じる時の掛け声としてこの言葉が唱えられ、後に「スヴァーハー」は、願いが神々に届く事を祈る聖句とされた。と解説がありました。
Wikipediaより
陀羅尼は「分別功徳品第十七」(ふんべつくどくほん)で「門持陀羅尼」という言葉で出てきてました。
こちらの陀羅尼の解説も追記したので、参考にしてみてください↓





