この法華経(ほけきょう)「提婆達多品第十二」(だいばだったほん)ほぐし読みは、「大乗仏教」の妙法蓮華経を、大まかにほぐし読みに整理しました。
第十二章「提婆達多品第十二」(だいばだったほん)
前回、「見宝塔品第十一」(けんほうとうぼん)では、多宝塔と多宝如来が出現しました。


《ブッダのいとこの、提婆達多・デーヴァダッタ》
次にブッダは自分の過去をみんなに語ります。
わたしは過去に法華経を求めました。王様の身分の時代に
もし、わたしに大乗の法を授けてくれる者があれば、わたしは生涯、その人に仕えよう。
と思いました。
すると一人の仙人が
「法華経があるので、仕えてくれるのなら説きましょう。」
と法華経を説いてくれたのです。
その時の仙人が、今のデーヴァダッタです。
わたしはデーヴァダッタに導かれて、六波羅蜜を身につけ、慈しみと憐れみと祝福と施しの慈悲喜捨において、全き者となりました。
自分で覚りをひらいたんじゃないのね・・・。そんなばかな・・・。
デーヴァダッタは未来に天王如来になります。
と語りました。
提婆達多(デーヴァダッタ)は
原始仏典では中部58経に名前がでてくる程度です。ブッダのいとこ、アーナンダの兄とも解説されています。
デーヴァダッタは厳格な禁欲主義を貫いた人物と解説されています。しかし大乗経典では、ブッダのもとで出家をしたが仏教僧団を乗っ取ろうと企てたり、ブッダを暗殺計画をしたり、悪人の代名詞で扱われています。詳しくは下記に解説しています。
そのとき、多宝如来の国から智積菩薩(ちしゃくぼさつ)がきて、多宝如来に「そろそろ国に戻るときです。」と伝えます。
ブッダは智積菩薩に、「文殊菩薩が戻るので、話を聞いてから戻るがいいです。」と伝えます。
文殊菩薩は、娑竭羅竜王(しゃからりゅうおう)の海中の宮殿から戻ってきて語ります。
「海中の宮殿において法華経だけを説いていました。竜王の娘は8歳でさとりに達しました。」
すると、竜王の娘も現れます。
それを見ていたサーリープッタが
「女性の身で、時を経たず8歳にしてさとりに達したのは信じられません。」
と言います。
竜王の娘は持っていた宝珠をブッダに渡すと、ブッダは即座に受け取ります。
竜王の娘はいいます。
「このように仏になるのに、それほどの時はかかりません。」と、
たちまち男子に変じて仏の姿になりました。
サーリープッタもうなずきました。
《提婆達多品第十二 おわり》 つづく
提婆達多・デーヴァダッタについて
提婆達多(デーヴァダッタ)は
原始仏典では中部58経「アバヤ王子経」に名前がでてくる程度ですが、
この原始仏典の浪花宣明先生の解説がとても詳しいので補足紹介しておきます。
デーヴァダッタは、
ブッダのいとこ、または、アーナンダの兄ともいわれているみたいです。
悪人のイメージが強いデーヴァダッタですが、
実は厳格な禁欲主義を貫いて、
独自の五つの戒をつくり厳守して過ごしていたそうです。
その五つが、
デーヴァダッタの五つのきびしい戒
1、林で住んで、村で住んではいけない。
2、托鉢のみで食事をする。招待は受けてはいけない。
3、糞掃衣(ふんぞうえ)だけで過ごす。
4、樹の下に住む。屋根の下で住んではいけない。
5、魚や肉を食べてはいけない。
この五つのきびしい戒はもともと遊行(ゆぎょう)する沙門が守るべき生活様式で、
これを支持する修行者も多くいて、
この厳しい戒を支持する修行僧たちが、のちにデーヴァダッタの教団グループを形成したと考えられているようです。
さらに、仏教僧団も遊行で移動して過ごしていた時代から、雨安居(うあんご)で定住する形式に変化していく修行僧も増えていき、
きびしい五つの戒に反発して、その考えの戒は異端とみなされていくようにもなっていきます。
そのことが、
後にデーヴァダッタがブッダの教団を分裂させようとした悪人と評価されるようになり、
さらに悪人のイメージが強化され、
ブッダを暗殺するために岩を落とす話や、象で襲う話などが経典にみられるようになり、仏典では悪人の代名詞で扱われています。
これら悪人のデーヴァダッタは、
デーヴァダッタの死後に作られた話で、
実際は厳格な修行者として一生を終えていると解説されています。
このデーヴァダッタが象で襲うエピソードは、インドの世界遺産、アジャンター石窟の17窟の壁画ですでに見ることができるので、かなり以前から作られた話になりますね。


